一般財団法人日本消防設備安全センター

文字サイズ

  • 標準

違反是正支援センター

教えて!よくある質問コーナー

A 立入検査

番号 種別 質問 内 容 回 答
A-1 立入検査 事前通告なしの立入検査  平成14年の消防法改正以降、立入検査に関する権原が強化され、相手方への事前通告義務や時間制限が撤廃されたが、用途や営業形態で事前通告と無通告を使い分ける運用方法等はありますか。  飲食店 、物品販売店舗、小規模雑居ビルなどで、避難施設に物品等が存置されている可能性のある防火対象物に対しては、無通告の立入検査が有効であると考えます。
 詳しくは、立入検査標準マニュアルを参考にしてください。
※立入検査標準マニュアル・第1立入検査実施要領2 参照 P13
A-2 立入検査 立入検査の拒否  立入検査を実施する旨の事前連絡を行っても、正当な理由もなく立入検査を拒否され、その後、関係者に対し再三にわたり連絡を行っても拒否されてしまう場合があります。このような場合、告発により対応することとなりますが、具体的にはどのようにすればよいですか。  消防法第4条に規定する立入検査権は、罰則によってその実効性を担保されています。相手方が立入検査を拒否等した場合には、その抵抗を排除してまで行使することはできません。正当な理由がなく拒否等される場合においては、告発により対応することとなります。
 告発により対応する場合は、次の点に注意する必要があります。
 ①立入検査は複数回にわたって試みること
 ②立入検査の必要性や目的について丁寧に説明し、その内容を記録しておくこと
 ③拒否等の理由を確認し明確に記録しておくこと
 また、告発先である検察庁又は警察機関と協議連携し、必要な証拠等を確認しておくことが望ましいと思われます。 
※立入検査標準マニュアル・ 第1立入検査実施要領3(4)及び4(3) 参照  P16 P18
【参考事例】
月刊フェスク2011年9月号 違反是正(高崎市等広域)
月刊フェスク2015年12月号 違反是正(東京)
月刊フェスク2016年8月号 違反是正(東京)
A-3 立入検査 立入検査結果通知書の受け取り拒否  立入検査において、覚知した違反事項については「立入検査結果通知書」を関係者に交付していますが、受取を拒否される場合があります。 「立入検査結果通知書」の受取を拒否された場合は、どのように対処したらよいですか。
 また、警告書の受取を拒否された場合はどうですか。
 通常、立入検査結果通知書を立入検査終了後にその場で交付する場合は、名宛人又は名宛人と相当の関係にある者に直接交付し、期日を改めて交付する場合は、再度出向するか、名宛人又は名宛人と相当の関係のある者に出頭を求め直接交付、または普通郵便により名宛人に送付します。
 また、違反処理基準に該当するおそれのある違反事実について通知する場合は、その後の告発等を視野に入れ、行政側の指導状況を証明するために直接交付する場合は署名を求めることとし、拒否された場合は、その旨を通知書の消防機関側の控え等に記録しておく。相手方が通知書の受領を拒否している場合又は遠隔地に居住しており署名が求められない場合は、書留郵便(違反事実の内容に応じ、配達証明郵便等)により送付します。 
 警告書の受領を拒否された場合は、配達証明郵便(必要に応じて配達証明付き内容証明郵便)により送達します。 
 詳しくは、立入検査標準マニュアル及び違反処理標準マニュアルを参考にしてください。
※立入検査標準マニュアル・第1立入検査実施要領6(2) 参照 P27
※違反処理標準マニュアル・第1違反処理要領5(4) 参照 P14
A-4 立入検査 店舗入れ替え等に係る対策について  特定防火対象物において、頻繁な用途変更やテナントの入れ替わり等により、毎年多くの新たな違反や繰り返し違反が発生している状況がある場合、立入検査等においてどのような対策が求められますか。  立入検査上の対策としては、査察行政需要の多様化を踏まえて立入検査実施対象物の選定基準の見直しや違反処理基準の強化を図る必要があると思われます。
 テナントの入れ替えに関する対策については、東京・高円寺南雑居ビル火災事件を受けて検討された報告書が参考となります。
【参考】 
「高円寺南雑居ビル火災を踏まえた防火安全対策に係る報告書(東京消防庁)(平成22年3月)
【参考事例】
月刊フェスク2011年1月(東京)
月刊フェスク2012年11月(東京)
A-5 立入検査 消防法令以外の法令違反  防火に関する規定など、消防法令以外の法令(建築基準法等)に違反しているおそれのある場合の対応について教えてください。  他法令違反の内容等を踏まえて違反是正を指導していく必要があります。
 消防法令以外の法令(例:建築基準法等)のうち防火に関する規定に違反しているおそれがあり、火災予防上重大な危険が認められる事案を発見した場合は、当該法令の所管行政庁へ通知し、是正促進を要請するなど、関係行政機関との情報の共有化を図り、指導していくことが望ましいと考えられます。
※立入検査標準マニュアル・第1立入検査実施要領4(7) P19

B 3条関係

番号 種別 質問 内 容 回 答
B 3条 屋外金属スクラップ集積場での出火事例  金属スクラップ集積場のゴミの中間施設において繰り返し火災があった。この案件について再出火防止について指導書を交付し、集積場の内容物である金属類、バッテリー類の区分について指導した。このような場合に消防法第3条第1項による措置命令は可能ですか。  金属スクラップ集積場の集積方法が管理されておらず、過去の火災事例などを参考に、命令権者が火災の予防に危険であると判断できる場合は、消防法第3条第1項の命令を発動することは可能です。しかし、消防法第3条第1項命令を行う際には、警察比例の原則に照らして判断する必要があります。
 逐条解説消防法では、次のように記載されています。
 「火災の予防に危険である」場合とは、火災の発生危険がある場合のほか、何らかの原因によって火災が発生した場合において延焼・拡大危険がある場合をいう。
 これらの要件の有無は、いずれも命令権者の認定に委ねられるが、周囲の状況を勘案して、個別的、具体的な危険又は支障が認められる必要があるが、必ずしも現実的な火災危険があることを要するものではなく、火災予防について専門的な知識、経験を有する立場から、過去の火災事例等を参考に、個別的な状況から合理的に判断して具体的な火災危険性があると認められれば足りる。
 金属スクラップに関する安全対策については下記資料を参考にしてください。
【参考資料】
※「ごみ固形化燃料等関係施設の安全対策調査検討報告書」資料8(平成15年消防庁報告書)
※「仮置場における火災発生の防止について(再周知)(平成23年9月環境省通知)

C 5条の3 消防吏員の命令

番号 種別 質問 内 容 回 答
C 5条の3 消防吏員による防火対象物における除去命令  違反対象物に対して、吏員命令を発動する要領や処理方法などの方策がありますか。  消防法第5条の3による消防吏員の命令については、違反処理標準マニュアル・第2違反処理基準により対応するとともに、実際の防火対象物を想定して査察実務研修を実施することで、職員のスキルをアップすることも重要です。
 詳しくは、違反処理標準マニュアルを参照してください。
※違反処理標準マニュアル・第2違反処理基準④ 参照 P72

【参考事例】
月刊フェスク2019年6月号 違反是正(甲府地区広域)
月刊フェスク2020年9月号 違反是正(福島市)
月刊フェスク2021年1月号(東京)

D 8条 防火管理関係

番号 種別 質問 内 容 回 答
D-1 8条 防火管理者選任対象物への消防用設備等点検に関する命令  消防法第17条の3の3に基づく消防用設備等の点検の結果を報告せず、又は虚偽の報告をした者は、罰則規定があります。
 また、消防法第8条第1項では、『管理権原者は防火管理者に、消防の用に供する設備等の点検及び整備等の防火上必要な業務を行わせなければならない』等と規定され、防火管理上の必要な業務を法令の規定又は消防計画に従って行われていないときは、消防法第8条第4項に基づく命令規定があります。
 このことから、防火管理者選任対象物である場合は、消防法第8条第1項の防火管理業務不履行として消防法第8条第4項の防火管理業務適正執行命令により消防用設備等の点検について命ずることが可能と考えて良いですか。
 立入検査により防火管理業務全般にわたり検査し、消防用設備等の維持管理違反が見受けられる場合は、消防法第8条第4項に基づく防火管理業務適正執行命令は可能です。詳しくは、違反処理標準マニュアル(違反処理基準)を参照して下さい。
 なお、告発について違反処理標準マニュアルでは、消防法第17条の3の3に基づく点検結果が報告されない場合は、消防法第8条の2の2第1項違反と同様に、告発をもって措置すべき事案とされ、「度重なる指導に関わらず改善が見られない場合には、勧告により対応し、悪質性があり、火災発生時の人命危険が大である場合は、告発により対応する。」と記載されています。
※違反処理標準マニュアル・第1違反処理要領8  参照 P37
D-2 8条 防火管理者選解任届出の未届違反  違反処理標準マニュアル(違反処理基準)によると、消防法第8条に基づく防火管理者未選任については、届出がなされていなくても実質的な業務が実施されていれば、違反処理基準には該当しないと記載されています。
 このようなケースにおいて、消防法第8条関係の届出を促す方法はありますか。
 違反処理標準マニュアル(違反処理基準)では、「防火管理者未選任」に関する違反について、「防火管理者として届出されていないが、選任され実質的に防火管理業務が行われていることが明らかな場合は、適用要件に該当しない。」と記載されています。
※違反処理標準マニュアル・第2違反処理基準⑤ 参照 P75
 この記載については、届出がない場合でも実質的に防火管理業務が行われているかどうかを確認する必要があることを示していると考えられます。具体的には、防火管理者の資格の有無を確認や、関係者からの供述、管理権原者に対する資料提出、報告徴収命令などにより判断することとなると思います。
 なお、防火管理者選任の届出が提出されない場合には、消防法第8条第2項違反としての警告は可能であると考えます。

【参考】 
消防法第44条 届出を怠った場合 (30万円以下の罰金又は拘留)

E 関係機関との連携

番号 種別 質問 内 容 回 答
E-1 関係機関との連携 消防法施行令別表第一(6)項ロに係る用途判定  (6)項ロの用途判定については、消防法施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第88号)により、「実態に則した用途区分の見直し」が示されたが、無認可の福祉施設における避難が困難な要介護者の具体的な判定方法はありますか。  無認可施設における要介護者の人数などを把握する場合には、消防法第35条の13を活用し、関係部局から要介護者の人数、程度区分などの情報提供を受けることが可能です。なお、福祉部局への届出がない施設については、介護保険を担当している部局、又は要介護認定等を担当している部局と連携し実態把握をすることが重要であり、関係部局との合同立入検査の実施が効果的であると思われます。
<参考通知>
 平成27年3月31日消防予第136号及び同日事務連絡 参照
【参考資料】認知症高齢者グループホーム等火災対策検討報告書
 認知症高齢者グループホームにおける安全対策を講ずるためには消防部局、福祉部局、建築部局等の関係機関が情報を共有し、連携して対応することが不可欠である。
 福祉部局が事業者からの指定又は指定の更新に係る申請を受けた場合に、建築部局及び消防部局と必要な連携をしながら、検査済証等により建築基準法や消防法などの防火関係規定の適合状況について確認のうえ、指定や指定の更新を行う。ただし指定の更新の際には、施設の迅速な安全確保を求めると共に、現に入居している要介護者への影響や改善に要する期間などを十分に考慮し調整することが必要である。
 また、立入調査等を通じて、建築基準法や消防法などの防火関係規定に係る不備を把握した行政機関から他の関係機関への情報提供等が必要である。
 さらに、防火関係規定に係る不備が把握された事業者から関係機関に対して適切な改善計画を提出させるなど、その後の改善指導に的確に結びつけていくための体制の構築が必要である。
【参考事例】
月刊フェスク2016年7月号 違反是正(福山地区)
月刊フェスク2019年5月号 違反是正(宮崎市)
E-2 関係機関との連携 有料老人ホームの取扱い  実態として有料老人ホームと同様のサービスを提供している施設に対して、消防法上どのように指導したらいいでしょうか。  福祉関係法令に位置づけられていない施設の消防法上の位置づけを明確化するため、平成25年政令第88号により改正が行われ、平成26年3月14日付け消防予第81号消防庁予防課長通知によりその運用が示されています。
 本通知によれば、サービス付き高齢者向け住宅の登録を受けているかどうかにかかわらず、老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供等の供与をする事業を行う施設は、有料老人ホームとして扱われるとされています。
 また、サービス提供の取扱いが不明確である場合には、福祉部局と連携の上、当該施設の取扱いを適切に判断することと示されています。
 有料老人ホームのように、介護居室等避難が困難な要介護者が入居することを想定した部分に定員がある場合については、当該定員の割合が一般居室を含めた施設全体の定員の半数以上であることを目安として(6)項ロと判定することもあることから、常日頃から福祉部局と情報の共有化を図るなどの連携体制を構築していくことが必要であると思われます。
【参考通知】
 平成27年3月31日消防予第136号及び同日事務連絡 参照
【参考事例】
月刊フェスク2021年6月号 違反是正(札幌市)

F 違反処理の進め方

番号 種別 質問 内 容 回 答
F-1 違反処理の進め方 過去に行政指導が行われていない違反対象物への対応  届出がないことにより消防機関が把握していないことがあります。このような防火対象物に対しては、立入検査を実施して消防法令違反について説明していますが、違反是正が思うように進まない場合があります。その場合、どの様に対応すればいいですか。  消防機関が把握していない対象物に対して、立入検査により新たな消防法令違反を覚知した場合は、その違反事実について関係者へ丁寧に説明する必要があります。
 また、関係機関との連携により情報を共有するほか、職員の予防業務に関する教育も推進する必要があると思われます。
【参考事例】
月刊フェスク2020年10月号 違反是正(岡崎市)
月刊フェスク2020年12月号 違反是正(喜多方地方)
月刊フェスク2021年2月号 違反是正(相馬地方広域)
F-2 違反処理の進め方 消防用設備の設置を指導する際に事業者から資金難の訴え  消防用設備等の設置指導にあたり、関係者から資金難を理由に設置が困難である旨の説明があり、その都度持ち越しとなり再三の指導をするが、改善に結びつかないことがあります。このような場合、効果的な指導方法はありますか。   資金難を理由に違反処理を留保する理由はありません。
 このような関係者に対しては、関係者に融資制度の活用などを説明することも必要であると思われます。
 ホテルニュージャパン火災事件控訴審判決(平成2年8月15日判決 東京高等裁判所)では、次のように述べられているので参考にしてください。
 「もし消防用設備に不備のあるホテルについて、所用の設備工事に費用を支出すると、経営が圧迫され、経営の継続ができなくなるという場合があるとすれば、消防用設備に不備のあることを知らない利用者が保護されるためにも、ホテル経営者は、少なくとも基本的な設備について工事資金の調達ができない以上は経営を断念すべきであり、又は資金の調達ができて設備工事が終了するまでは営業を休止すべきであるとするのが、道理というものであろう。」
F-3 違反処理の進め方 違反処理を行うための計画、準備  所属には「違反処理規程」が定められていますが、違反是正を継続的・効果的に行っていくためにはどのような計画を立てるべきですか。  違反是正をしていく上では、組織として違反処理を進める計画を立てることが重要であり、立入検査を実施して改修が進まない場合には、警告書、命令書などを交付する時期を組織として計画する必要があります。そして、その判断基準として、違反処理標準マニュアルにおいて違反処理基準が定められています。
 また、違反処理規程と比較して業務が計画どおりに執行しているかチェックする体制を構築する必要があります。
 なお、違反処理標準マニュアルでは、「立入検査で見つかった違反対象物のうち、火災が発生した場合の危険性や悪質性の高いものは、徹底的に改善させていく対応が必要である。」、さらに、「違反事項が火災の予防上猶予できないと認められる場合又は特異な違反事案の処理に係る場合には、違反処理基準に定める措置順序によらないことが出来る。」と記載されています。
※違反処理標準マニュアル・第1違反処理要領2 参照 P2
【参考通知】
 平成27年3月31日消防予第137号「査察規程の作成例」 参照
【参考事例】
月刊フェスク2014年3月号 違反是正(東京)
月刊フェスク2020年10月号 違反是正(那須地区)
月刊フェスク2021年4月号 違反是正(湖南広域)
月刊フェスク2021年7月号 違反是正(京都市)
F-4 違反処理の進め方 差押及び競売開始決定のなされた防火対象物の違反処理  違反処理中の防火対象物において、不動産登記事項証明により、差押及び競売開始決定を覚知した場合、名宛人である所有者が変わる可能性があることから、防火管理面の強化等の安全担保措置を講じて違反を留保することも考えられますが、「差押」は所有権の「使用、収益、処分」のうち、「処分」のみが制限されていることから、「差押」後も新たな所有者となるまでの間、現所有者を名宛人として違反処理を進めることになりますか。  お見込みのとおり。
 なお、違反処理標準マニュアルには、違反処理を留保する場合の例が記載されていますが、防火対象物が一定の用途として使用されている限り、所定の消防用設備等の設置指導、措置命令は可能であると思われます。
F-5 違反処理の進め方 消防用設備等の維持義務違反における違反事実の特定方法  消防法第17条の3の3に基づく消防用設備等の点検報告において、設備の作動や機能に係る不良等の維持管理義務違反を覚知した場合、当該消防用設備等点検結果報告書の内容をもって違反とし、違反処理を進めて良いのでしょうか。   消防用設備等点検結果報告書の不備事項を端緒として立入検査を実施し、消防用設備等の維持管理状況を確認し違反事実を特定した後に違反処理を進めるべきであると思われます。
F-6 違反処理の進め方 違反処理への移行  消防法令違反に係る違反処理を行った実績が少なく、違反是正に関する考え方について伺います。  違反処理を進めるには、組織としてどのように違反処理を進めていくのか計画をたてることが重要です。詳しくは、平成27年3月31日消防予第137号「査察規程の作成例」を参考にしてください。
【参考】
 ホテル火災対策検討部会報告書(平成25年7月17日公表・消防庁報告書)
 宝塚市カラオケボックス火災事件」や「福山市ホテル火災事件」を契機に、行政の不作為について議論がなされています。
【裁判事例】
カラオケボックス火災事件(平成19年12月12日神戸地方裁判所)
【参考事例】
月刊フェスク2020年5月号 違反是正(福山地区)
F-7 違反処理の進め方 消防法令違反と建築基準法令違反  建築基準法令の違反があり、消防法令違反(消防用設備等の未設置等)もある場合、消防法令の違反是正を先行して行ってよいですか。  消防法第17条第1項に基づく消防用設備等の設置義務は、一定の防火対象物が一定の用途として使用されることによる火災危険(出火危険、火災拡大危険又は火災による人命危険)を防止するために課されているものであることから、建築基準法令に違反する建築物であるか否かは、消防用設備等の設置義務とはかかわりはありません。
 したがって、違反建築物であっても消防用設備等の設置義務が生じます。
 なお、建築基準法令違反を是正することによって、消防法令違反が解消される場合もあることから、建築行政庁と違反建築物の是正に係る対応について事前に調整するなどの情報の共有化を図ることが必要であると考えられます。
【参考事例】
月刊フェスク2016年11月号 違反是正(熊本市)
月刊フェスク2020年3月号 違反是正(横浜市)
F-8 違反処理の進め方 特定用途のテナント撤退  (16)項イの防火対象物に対し、自動火災報知設備の設置指導を行ってきたが、特定用途のテナントが撤退し空室となったことから、用途が(16)項ロに変更になりました。
 このため、当該設備の設置義務がなくなった場合どのように対応したらいいでしょうか。
 テナントの退去等により設置義務が無いと判断した場合には、建物の所有者等に対し、将来、特定用途のテナントが入居した場合には設置義務が生じることから、テナントが入居する前に当該設備を設置するように指導しておくことが重要であると考えられます。
 なお、空室部分の取扱いについて、総務省消防庁から、平成14年9月30日消防予第281号「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(質疑18)・平成12年3月27日消防予第74号「スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について」が通知されているので参考としてください。

G 警告、命令、告発、代執行

番号 種別 質問 内 容 回 答
G-1 警告、命令、告発、代執行 一事不再理の原則  消防法に基づく命令違反で懲役・罰金の罪を償った者に対し、引き続き消防法に基づく違反がある場合に、再度命令を出せるのでしょうか。重ねて命令を出した場合は、刑事訴訟法上の一事不再理の原則に抵触しないのでしょうか。  一事不再理の原則が適用されるのは、確定判決の対象となった既存の犯罪事実に限定され、確定判決以後において継続されている犯罪事実には適用されないものと解される(最判昭和24年5月18日刑集3巻6号796項)ことから、確定判決以後も同種違反事実がある場合は、再度命令を出すことは可能であると思われます。
【一事不再理の原則】何人も、同一犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。(憲法第39条後段)
G-2 警告、命令、告発、代執行 履行期限の設定  行政処分への移行に際して、関係者が違反を改善することができる客観的な日数を消防機関が把握する必要があると思われますが、適切な期間についてご教授願います。  違反処理標準マニュアル・第2違反処理基準「履行期限」を参考にしてください。
 なお、法第17条第1項違反に関する消防用設備等の設置に係る履行期限については、工事日数例等が記載されています。
※違反処理標準マニュアル・第2違反処理基準 参照 P64
G-3 警告、命令、告発、代執行 警告・命令  屋内消火栓設備の設置義務がある工場において、屋内消火栓設備の設置基準以下の面積しか使用していないと関係者側が主張して設備等を設置しない場合、どのように対処すればいいですか。  関係者に対し十分な説明を行い、危険性や必要性を認識してもらうよう指導しても改善されない場合には、違反処理マニュアル(違反処理基準)に則って粛々と対処するべきであると考えます。
G-4 警告、命令、告発、代執行 非特定防火対象物の違反処理  「違反処理標準マニュアル」には、火災が発生した場合の危険性や悪質性の高いものは徹底的に改善させていく対応が必要との記載があり、特定防火対象物の違反対象物は、積極的に違反処理へ移行すべきであることは当然であると考えますが、工場や倉庫等の特定防火対象物以外の防火対象物における違反対象物はどのように判断すべきですか。公共の安全及び行政の公平性の観点からご教授願います。  特定防火対象物であるか否かに関わらず、消防法令において規制されている事項を遵守しない者には、行政指導により自発的に遵守させ、又は、行政処分等により強制的に遵守させることが法の前提であり、これに従い行政機関が対処することにより、公共の安全(消防法の目的)が実現できると考えます。
 そして、防火対象物に対する規制は、その規模、構造、態様等により表される危険性に応じて規定されており、当該規制に違反している場合は、既に公共の安全が保たれておらず、行政機関は違反を是正させるために有する権限を行使する必要があるものと考えられます。このことから、特定防火対象物であるか否かを考慮する要素はないものと考えます。
 なお、優先的に違反処理を実施するべき対象の選定においては、防火対象物の用途・規模・収容人員(利用者)や違反事実の内容などの火災危険性を総合的に考慮して合理的な判断を行うべきであると考えます。

H 危険物

番号 種別 質問 内 容 回 答
H-1 危険物 火災になった危険物施設に対する使用停止命令等  一般取扱所で危険物の注油作業中に火災が発生し,作業員 1人が火傷を負ったが,鎮火後機器等には損傷はなく特に客観的危険性は見当たりません。この火災は人的ミスにより発生したものであり取扱所の技術上の基準には違反はしていません。この施設を再開する要件として,作業工程に於ける危険要因の把握とその対策により安全性が確認されるまでの期間について,使用することを控えるように指導しました。このように作業員の人的ミスであるソフト面に対して,使用の停止または制限をすることは可能ですか。  当該事案については、消防法第10条3項の取扱いに関する基準違反に該当すると考えられることから、消防法第11条の5第1項等に基づく警告又は基準遵守命令となると思われます。
 なお、危険物取扱者に対する免状返納運用基準も参考にしてください。
【参考通知】
 「危険物取扱者免状に関する事務処理手続きについて」の一部改正について(平成23年7月1日付け消防危第129号)
H-2 危険物 破産者に対する地下タンクの処理指導  地下タンクを有する危険物施設が廃止された場合、地下タンクの処理(残油の抜き取り及び洗浄、掘り起し又は砂埋め処理等)を指導していますが、当事者が破産した場合、財産の管理は破産管財人において行われます。しかし、当該物件に利用価値がなく売却ができない場合は、処理費用の捻出ができないため、誰に対してどのような指導をすべきか。  裁判所において、破産宣告の決定があると、破産者の有していた財産は破産財団を構成する(破産法第6条1項)こととなり、この破産財団を管理し、処分しうる権限は、裁判所によって選任された破産管財人が持つ(破産法第7条)こととなり、破産管財人が管理して処分する権限を持つこととなります。
 また、破産手続きによっても債務の一部を配当したに止まり、多大な債務が残っている場合は、裁判所によってその責任を免除されることがあります。
 このことから、破産宣告後の指導については、破産管財人から情報を入手しながら対応を図る必要があると思われます。
H-3 危険物 給油取扱所の違反処理  給油取扱所において、敷地内に車両が多数置かれていることから関係者に確認したところ、一時的に置いているとの説明がありました。後日、中古車販売雑誌などで当該車両を販売していることを確認しました。
 危険物の規制に関する政令第27条第6項第1号ヲ違反として違反処理を行うことは可能ですか。
 車両が置かれている場所が、車両への給油、容器へ詰替えや地下タンクへの荷卸し等、危険物の取扱い作業を行う際に必要な空間に該当する場合には、危険物の規制に関する政令第27条第6項第1号ヲに違反していることから、違反処理は可能であると思われます。
 しかし、車両が置かれている場所が建築物の周囲の空地に限定され、他に車両への給油、容器へ詰替えや地下タンクへの荷卸し等、危険物の取扱い作業を行う際に必要な空間が確保されている場合には、危険物の規制に関する規則第40条の3の6第2項第2号の物品等の販売等の基準に適合することから、実態を踏まえて判断する必要があると思われます。
H-4 危険物 緊急使用停止命令の解除  危険物施設で火災が発生したことから、法第12条の3第1項に基づく緊急使用停止命令を発動しました。
 火災鎮火後、当該危険物施設の焼損程度は部分焼であり、焼損していない部分の使用は可能であることから、関係者から焼損していない部分の使用を求められた場合に、緊急使用停止命令の解除はどのように行えばいいでしょうか。
 緊急使用停止命令(法第12条の3第1項)の解除については、次のような事項が想定されます。
①緊急使用停止命令は、次の事項を勘案し、公共の安全の維持及び災害の発生の防止が確保されている場合に解除する。
ア火災の鎮火、漏えい危険物の回収など災害防除措置の状況 イ当該危険物施設における消防法令の遵守状況 ウ 事故原因を踏まえた再発防止策の内容
②当該危険物施設の使用再開にあたり、復旧工事に係る変更許可(法第11条第1項)、予防規程変更の認可(法第14条の2第1項)等が必要となる場合には、原則として緊急使用停止命令の解除前にこれらの事務処理を行い、①イ及びウの関連事項に係る確認を併せて行う。また、変更許可等の後において、①イ及びウに係る危険物施設側の取組状況等から危険物保安上支障がないと認められる場合には、完成検査の前に緊急使用停止命令を解除することとしてさしつかえない。
③命令を解除する場合は、その旨を受命者に対して必要に応じ通知する。とあり、また、使用停止命令は、私権制限の性格の強いものであることを考慮し、危険物保安上必要な範囲にとどめることが必要である。
 以上のことから、設問のような部分的な使用が可能である場合においても、上記対応によることが原則と思われます。

① 危険物施設での火災の鎮火、危険物の回収など災害防除措置の完了
② その他消防法令の遵守状況及び再発防止への対応状況の確認
③ 危険物施設の変更許可及び仮使用の申請
④ 変更許可及び仮使用の承認
⑤ 完成検査完了、緊急使用停止命令の解除
※ 危険物保安上支障がないと認められる場合、④で緊急使用停止命令の解除

I 名宛人

番号 種別 質問 内 容 回 答
I-1 名宛人 名宛人の特定  風俗営業の許可等に際して、警察機関等と連携して立入検査を行った場合、違反内容(消防用設備等の未設置など)については、所有者等に立入検査結果通知を交付する必要がありますか。  風俗営業行政との連携における基本的な考え方については、平成13年11月12日付け消防予第393号「風俗営業の用途に供する営業所を含む防火対象物の防火安全対策における風俗営業行政との連携について」により示されており、是正措置が必要となる防火対象物については、速やかに許可申請者等(許可申請者以外の管理権原者等への是正指導が必要な場合は当該管理権原者等を含む。)に接触し、是正指導を行うこととされています。消防用設備等の未設置などの違反については、所有者等にも結果通知書を交付する必要があると思われます。
【参考】逐条解説「消防法」
 関係者は、一つの防火対象物について数人存在するのが一般的であるが、このうち「権限を有する者」は、設置及び維持の行為を法律上正当になすことのできる者であり、一般的には、固定式の消防用設備等については、設置命令の相手方は通常所有者であり、消火器等の器具類については、賃借人である場合もある。また、固定式のものであっても、維持の命令については賃借人が相手方になる場合もあろう。
I-2 名宛人 複数権原の防火対象物の名宛人  区分所有又は共有の防火対象物において、消防法令の改正により、新たに防火対象物全体に屋内消火栓設備及び自動火災報知設備の設置が義務付けられることとなった場合、消防法第17条の4の措置命令については、誰を名宛人とすべきでしょうか。ただし、区分所有の場合は、当該防火対象物には、管理組合法人は存在しないものとします。
 また、消防法施行令第8条の区画が構造基準を満たさなくなったことにより、新たに同様の消防用設備の設置義務が生ずることとなる場合には、どのように考えるべきでしょうか。
 当該事案のような場合については、原則として各区分所有者が名宛人になると思われます。
 なお、令8区画が構造基準を満たさなくなった場合についても、それぞれ別の防火対象物であると判断できないことから、必要な消防用設備等を設置する義務が生じると思われます。
【参考】「マンション法」 有斐閣
 管理者は、その職務に関して区分所有者を代理とするものであるから、管理者がその職務の範囲内で第三者との間でした法律行為の効果は、管理組合が法人格を取得しない限り、各区分所有者に帰属することとなっています。
I-3 名宛人 名宛人の特定  登記上の所有者が死亡しており、相続人による登記がなされていない場合については、どのように名宛人を特定すれば良いでしょうか。  原則的に建物の相続者等が名宛人になると考えられますが、登記事項証明書等に記載されていない情報については、関係者からの供述や関係部局からの情報なども参考にして個別案件ごと適宜判断する必要があると思われます。
I-4 名宛人 名宛人を複数とすること  消防用設備等未設置などの重大な消防法令違反が確認された場合、名宛人を特定するため、住民票の写しや建物の登記事項証明書、法人の登記事項証明書等により確認します。
なお、名宛人が別の第三者に賃貸し、さらに複数テナント等に賃貸している場合などは、その契約内容等により違反改修の履行義務者として占有者も含まれることも考えられますが、このような場合、名宛人に賃借人、占有者を加えることは適当であるか伺います。
 違反対象物の実態から、所有者以外の占有者、管理者等を名宛人として判断する場合も考えられますが、実際に処分権を有しない者を誤って名宛人とした場合、その命令を無効とした判例もあるので十分注意してください。
【裁判事例】 
 ある給油取扱所は、防火塀の一部を撤去したまま営業していたが、当該給油所を現実に管理している者は、甲会社の代表取締役Aであり、法律上(商業登記簿上)は、乙会社(事務所を有していない、いわゆる幽霊会社))の代表取締役Aの管理下にあった。所轄署では、実質上、当該給油所の経営にあたっていた甲会社のAに対して、消防法第12条の2の使用停止命令発したが、命令違反に係る正式裁判の結果、甲会社のAには命令を履行する権原がなく、名宛人を誤った無効の命令とされた。 
【参考事例】
月刊フェスク2018年6月号 違反是正(郡山地方広域)
月刊フェスク2020年11月号 違反是正(郡山地方広域)
月刊フェスク2021年2月号 違反是正(相馬地方広域)
I-5 名宛人 違反処理における名宛人  警告書等の交付にあたり,法人の代表者を確認したところ,代表取締役及びその配偶者である取締役の二人が死亡しており,取締役が不在の状態になっています。このような場合,警告書等の名宛人は誰になりますか。
 なお,新たな取締役等が決まらない状況にあります。
 登記上において取締役等が定まっていない場合は、実際の法人代表者が誰であるのか質問調書などにより把握するほか、納税などの情報から事実上の代表者を確認し名宛人として検討するなど、個別案件ごと適宜判断する必要があると思われます。
※違反処理標準マニュアル・第4違反処理関係書式の記入要領 参照  P105

Z その他

番号 種別 質問 内 容 回 答
Z-1 その他 違反物件の情報開示請求について  第3者からの防火対象物の情報開示請求(立入検査結果、消防用設備等点検結果報告書等)があった場合、どこまで開示できるのでしょうか。  開示する内容については、各市町村における情報公開条例に基づき、担当部局と相談の上判断する必要があります。
 なお、立入検査結果通知書の情報を開示するとした判例があるので参考としてください。
【裁判事例】
 平成15年11月27日東京高等裁判所において、消防法4条又は16条の5に基づく立入検査結果通知書及び改修(計画)報告書に記載された企業、氏名等を特定する情報が、情報公開条例に不開示事由として規定する法令秘情報に該当しないとされた事例。
Z-2 その他 消防職員による実測  防火対象物の床面積が不明な場合、消防職員による実測にて床面積を算定しているが、その際の注意点があれば教えてください。
 また、実測で算定した床面積を根拠として消防用設備等の設置命令を行うことはできま すか。
また、実測で算定した床面積を根拠として消防用設備等の設置命令を行うことはできますか。
 床面積については、建築基準法施行令第2条第1項第3号に規定され、壁等の区画の中心線で囲まれた水平投影面積とされていますが、消防職員が実測を内寸(室内面積)で算定した場合、実測により算定された床面積は、本来より少なく計測されることが考えられます。また、消防職員が床面積を実測する場合には、物品等の障害物により正確な測定が困難な場合も考えられることから、算定された面積は一定程度の幅を考慮する必要があると思われます。
 実測に基づき設置命令を行う場合は、建築物の図面等を関係者に求めるなど、他の手法によって面積を確定することも検討する必要があると考えますが、資料提出命令等による手続きを実施しても防火対象物の床面積を確認することができない場合は、消防職員による実測において客観的事実を残すことにより消防用設備等の設置命令の正当性を主張することが可能になると思われます。
Z-3 その他 公示内容の情報提供  命令書を交付した案件について、問い合わせがあった場合、どの程度まで情報を提供することが妥当ですか。  情報提供の内容としては、対象物名・所在地・受命者の氏名・命令内容・根拠法令などの公示している内容については問題ありませんが、受命者側にとって不利益となる情報(本命令と関係のない事実など)や不確定な情報(推測、憶測などの主観的な情報)については、問題があると考えられます。
Z-4 その他 対象物情報の情報公開  消防用設備等の維持管理状況について、入居を検討している事業者から契約の参考としたいため教えてほしいと相談があった場合、対象物の情報を提供していいのでしょうか。  設問については、原則として当事者間で解決すべき事項であると考えられますので、消防機関として対応する場合は、情報公開条例などで規定されている手続きに基づき行うべきであると思われます。
 なお、立入検査結果通知書等の公開についての判例があるので参考としてください。
【裁判事例】公文書不開示処分取消請求控訴事件(東京高裁平成15年11月27日判決)
 「何らかの指摘事項があった者については、公法上の義務を履行していない事実が明らかになる点で不利益があるといえるが、そもそも、ひとたび火災が発生すれば重大な被害が生ずるおそれのある査察対象物を所有ないし管理する以上、消防法以下の法令を順守すべき義務は重いというべきであり、その義務違反の事実を秘すべき必要性は仮に認められるとしても乏しいものというべきである。」
Z-5 その他 消防設備士の違反行為  消防設備士による点検内容に不備があったが、当該消防設備士の過去の違反歴や聴取内容等を勘案し、注意指導で止め、都道府県への報告を猶予することは可能ですか。  平成12年3月24日消防予第67号「消防設備士免状の返納命令に関する運用基準」により、違反行為に係る違反点数及び措置点数を算定するのは免状の交付知事であることから、把握した違反事実については都道府県に報告すべきであると思われます。
※運用基準第5・1 違反事実の報告等 参照
 なお、ある事実について、違反と捉え報告するか、報告せずに注意指導とするかの判断を消防機関が行うとした場合、消防機関によってその判断に差異が生じることから、違反事実を把握した段階で、都道府県の担当者等と処理方法等の調整を図り、適正に処理されることが望ましいと考えます。
参考文献: 予防技術検定のための消防予防概論第2巻 防火査察、第4巻 危険物、逐条解説消防法、消防行政法要論、実例に学ぶ消防法令解釈の基礎、倒産をめぐる法律知識とQ&A、不動産競売の実務、消防行政法要論、消防官のための立入検査の法律知識、消防法の研究